GPSを使った現地調査
OSMの編集方法を知ることは、マッピングにおいてとても大切なポイントです。実際に編集するにあたって、その方法を知らなくては編集ができません。しかし、地図に追加する地理情報を収集することはもうひとつ大切なタスクです。そのためには、外に出て対象の地域を調査する必要があります。
このガイドでは、現地調査の方法についていくつか手法を紹介します。
この章では、GPSとはどのようなものか、そしてGPSがどのようにして動作するかを説明します。GPSロガーの操作方法と、地図を作成する方法をここで学習しましょう。
今回は例として、マッピングでよく使われるGarmineTraxVistaHCxの操作方法を説明します。同様の機能をもつGPSは数多くありますが、動作の基本は変わりません。
GPSとは?
GPSとはある種の電波の受信機で、携帯電話に似ています。しかし、携帯電話のように電話局からの無線信号を受信するのではなく、GPSは衛星からの信号を受信します。衛星からの信号を受信することで、GPSは地球上におけるあなたの位置を計算し、特定することができます。位置情報は座標と呼ばれ、2つの長い数値のペアで表現されます。1つめの数字は、東西方向の位置を表しています。これを”経度”と呼びます。2つめの数字は、南北方向の位置を表しています。これを”緯度”と呼びます。地球上のすべての位置は、この緯度と経度で表すことが可能です。
例えば、”経度:-8.639298、緯度:116.311607”は、インドネシアのロンボク島の位置を表しています。
GPSロガーの起動
GPSを起動させる前に、屋外に出て、空の見える場所へゆきます。GPSは衛星からの信号を受信することであなたの位置を特定しますので、屋内では正常に動作しません。
GPS機器の右側にある電源ボタンを数秒間押してください。GPS機器が起動し、衛星画面が表示されます。しばらくすると以下の画像のような画面が表示され、GPS機器が衛星からの信号探査を開始します。3つ以上の衛星を捕捉すると、GPSはあなたの位置情報を計算しはじめます。
- 現在の位置情報の計算が終わると、衛星の表示は消え、メインメニューが表示されます。
GPSの操作方法
- GPSにはいくつかの画面表示があり、それぞれ異なる動作を行うことができます。画面表示を切り替えるには、機器の右側の電源ボタンの上にある、”X”ボタンを押してください。このボタンは、画面表示をもとに戻すためにも使われます。操作を誤るなどしてキャンセルを行いたい場合、”X”ボタンを押してください。
- また、”X”ボタンを押すことで、以下のように画面表示を切り替えることができます。
- 衛星ページを再度表示させると、3つ以上の衛星を捕捉していることが確認できるはずです。左上の隅には、あなたの位置情報(緯度・経度)が表示されます。
- 地図ページを表示すると、いまあなたがいる場所を地図上で確認することができます。もし既にGPSへOSMを追加している場合、道路と場所の情報も確認することができるでしょう。追加していない場合、背景には何も表示されません。GPSの左側にある上下の矢印ボタンを押すと、地図の拡大縮小が可能です。
移動記録(トラック)とウェイポイント
GPSには、後で地図をつくる際に便利な位置保存機能が2種類用意されています。1つめは、GPSのメモリにあなたの位置を記録する機能です。場所の記録を行うたび、その名前と座標情報が記録されます。たとえば、あなたが最初に記録したポイントは001、2番目は002……という順番です。
ウェイポイントを記録する際に番号が 001から始まらない場合は、以前に取得したデータを削除してください。メインメニューの”Find”を表示させます。
“waypoint”を選択し、右側のサブメニューボタンからウェイポイントサブメニューを表示させます。
画面をスクロールして”Delete”を選び、”all symbols”をクリックして”yes”を選択してください。
ポイントを記録する際、別の紙にその番号と、場所の内容や特徴的な属性を記載しておくと便利です。GPSに保存された場所情報はウェイポイントと呼ばれます。
2つめのGPSの機能は移動記録(トラック)と呼ばれます。ウェイポイントが1つの特定の座標を記録するのに対し、移動記録はあなたが移動した経路を繋ぎ、線として表現されます。例えば、あなたの位置情報は1秒ごと、1メートルごと、に記録され、それらがつながることで、あなたがどこを移動したかの経路がわかるようになっています。移動記録は線で表されるため、道路のラインや地物のシェイプを描く際に非常に便利です。
位置情報を保存する
- あなたがいま居る位置をウェイポイントとして記録するには、まずメインメニューに戻るまで”X”ボタンを押してください。スティックを使って、画面上で”Mark”の位置を反転表示させてください。スティックを押して、”Save Waypoint”画面を表示します。
- この画面では、保存済みのウェイポイントについての情報が表示されます。1つめはウェイポイントの名前です。もしウェイポイントを記録したのがはじめてであれば、名前の欄には”001”と表示されていることでしょう。このオブジェクトについて残しておきたい情報を別紙にメモするときに、その紙の番号と対応します。次に書かれているのは、ポイントが記録された日付と時間です。その下には座標、および標高が表示されます。
- スティックを操作して、画面の下に配置されている”OK”ボタンまで表示を移動させてください。スティックを押すと、いま現在の所在地が保存されます。また、メモ帳に場所の記録を行う際には、番号だけではなく、その番号の場所がどのような場所なのか、残しておきたい情報を一緒に記載しておくことが大切です。
- “X”ボタンを押すと地図画面に戻ります。先ほど記録したポイントが地図に表示されているはずです。
移動記録の保存開始
- 特定の位置をポイントとして保存する方法に続いて、移動記録の取得開始と停止方法を紹介します。移動記録はウェイポイントと異なり、保存開始と同時に自動で保存が行われます。マッピングを開始するときに記録を開始して、終了したら記録も停止させるのはよい習慣です。あなたが移動した地図記録は、コンピュータ上で確認することができます。道路のコースをマッピングしたいときは、道路の開始点と終了点でウェイポイントを記録しておき、道路の種別と名称などの情報をノートに記録しておくとよいでしょう。
- 移動記録を開始するには、”TrackLog”という表示が出るまで、”X”ボタンを押してください。
- 過去のGPS移動記録を消去したい場合は、スティックで”Clear”を選択し、スティックを押してください。一番上に表示されているバーの表示が”0%”に変化します。
- 移動記録を開始するためには、スティックを操作し、”On”が反転表示されている状態でスティックを押します。GPSが移動経路の記録を開始します。
- “X”ボタンを押すと地図画面に戻ります。あなたが位置を移動するたびに、移動した経路の記録が点として表示されます。
ウェイポイントと移動記録をコンピュータへコピー
- GPSを使ってマッピングが終わったら、ウェイポイントと移動記録をコンピュータへコピーし、JOSMで開けるようにしてみましょう。まずはGPSのトラックページを表示させて”Off”を選択し、記録を停止します。
ウェイポイントと移動記録をコピーするには、Garminが提供しているBaseCampというソフトウェアを使うのがひとつの方法です。ダウンロードはこちらから可能です。
ですが、このガイドでは、いくつか追加機能が搭載されているGPSBabelというプログラムを使用します。
コンピュータとGPSを接続
- コンピュータとGPSをケーブルで接続します。ケーブルの片方をコンピュータのUSBポートに接続し、ケーブルの反対側はゴムで覆われたGPS側のポートに接続します。ウェイポイントと移動記録をコピーするには、GPS装置の電源が入っている必要があります。
GPSドライバのインストール
- GPS装置のドライバをコンピュータへインストールする必要があります。ドライバファイルは以下からダウンロード可能です: Garmin Website
- “Download”をクリックして、インストール用ファイルをダウンロードしてください。コンピュータ上の保存場所を表示させ、ダブルクリックすることでインストールが可能です。
Linux(少なくともFedora)では、eTrex Vista HCxなどのGarmin機器と接続するために特殊なドライバーを使う必要はありません。
Garmin機器に電源が入っていることを確認し、コンピュータとUSBケーブルで接続してください。
以下で解説するGPSBabelやGPSPruneというソフトウェアを使うことで、機器からあなたのデータを取り出すことができます。
GPSBabelのセットアップ
GPSBabelのインストール
- GPSBabelのインストールファイルを探してください。ダブルクリックしてインストールを開始します。
- “Next”をクリックします。
- “Accept”→”Next”の順にクリックします。
- プログラムがインストールされるまで、”Next”をクリックします。
- プログラムのインストールが完了したら、”Finish”をクリックするとGPSBabelが起動します。
移動記録とウェイポイントのコピー
- ウィンドウの一番上に表示されている”Device”という文字列の横にある円をクリックします。
- “Format”項目のドロップダウンメニューから、”Garminserial/USBprotocol”を選択します。
- ウィンドウの中央付近の”Output”の下にある”Format”項目のドロップダウンメニューから”GPXXML”を選択します。ドロップダウンメニューの”Format”欄にて、”GPXXML”を選択してください。
- “FileName”をクリックし、あなたが保存したGPSのファイル名を入力します。ファイル名は、記録を行った日付と場所の名前など、データの内容がわかる名称にしておくとよいでしょう。例えば”jakarta-07-07-2011”、などです。
- GPS機器がコンピュータに接続され、電源が入っているていることを確認します。
- ウィンドウの右下にある”Apply”ボタンをクリックします。
- 以上の操作で、画面に進捗表示があらわれ、GPS機器からデータを吸い上げている状況が表示されます。処理が完了すると、あなたが記録したポイントと移動記録がファイルとしてコンピュターへ保存されます。
JOSMでのデータ読み込み
- JOSMを起動して、上部のメニューから”ファイル”→”開く”をクリックします。
- GPSBabelで作成したファイルを探して選択してみましょう。
- ポイントと移動記録がJOSMに読み込まれます。
まとめ
おつかれさまでした!
以上で、GPS機器の取り扱い方法は終わりです。。
操作がよくわからない箇所があれば、実際にいくつか、わかり易い場所を保存して練習してみましょう。
この章では、あなたはポイントと移動記録をJOSMで開くことを学びました。後の章で、この情報を新しい地点として、OpenStreetMapへ登録する方法を紹介します。
次の章では、OpenStreetMapに登録する情報の集め方としてもう一つ、Filed Papersを紹介します。Field Papersで使うのは紙とペンだけですが、それでもGPSと同様に、場所の情報を収集することができます。